富士と地平線2010/01/01 18:32

東京からの富士
東京の、アパートの窓から見る富士は、くるしい。冬には、はっきり、よく見える。小さい、真白い三角が、地平線にちょこんと出ていて、それが富士だ。なんのことはない、クリスマスの飾り菓子である。しかも左のほうに、肩が傾いて心細く、船尾のほうからだんだん沈没しかけてゆく軍艦の姿に似ている。
『富嶽百景』(太宰治)

 写真は、今日、多摩の自宅のベランダから望んだ富士。元旦に撮った富士につけるキャプションとしては、「沈没しかけてゆく軍艦」というのは、意気があがらないことおびたたしいけれど、もと文学セーネンのわたしは、ベランダから富士を見るたびに、「沈没する軍艦だなあ」と思うのである。左のほうに、肩が傾いているとは思えないけれど。

 そして、あらためて引用して、山際のことも地平線というのだろうかと思い、地平線までの距離ということを考えた。
 地表を完全な球面とすれば、高さh(m)の視点から地平線までの距離は、大気屈折による浮き上がり等を無視した概算で、√(h*地球の直径)となる。(地球の直径≒12700000m) これは、意外に小さい値だ。高さ5mの甲板から水平線までの距離は、8kmになる。
 同じ計算式を使うと、どこから富士が見えるかがわかる。海抜0mで富士山が見えるのは、約220km離れたところまで、海抜1000m地点ならば、330kmとなる。そして、ネットで検索したところ、じっさいに、水平距離にして320km地点・標高996mの和歌山県の大雲取山から観測例があるということがわかった。なお、東京から富士への直線距離というのは、案外近い。皇居からほぼジャスト100kmである。