追悼・泡坂妻夫さん2009/02/05 19:42

 昨日、泡坂妻夫さんが亡くなられたという報道があった。会って話を聞いてみたいひとのひとりだった。

 わたしの好きな泡坂さんの本は、以下である。
『家紋の話 - 上絵師が語る紋章の美』および、その続編である『卍の魔力、巴の呪力 - 家紋おもしろ語り』
『大江戸奇術考 - 手妻・からくり・見立ての世界』
『奇術探偵曾我佳城全集』
 『曾我佳城全集』を除き小説でないのは、わたしが、氏の小説の必ずしもよい読者ではないということなのだろうが、氏の多彩な才能の中で、紋章上絵師の技を発展させたテセレーション(連続模様)デザインのセンスなどに、より強く惹かれるのである。たとえば、『妖女のねむり』のカバーの変形した紗綾形は、これも泡坂さんのデザインがオリジナルのはずだが、幾何学的な対称性だけを考えていたのでは思いつかない職人技である。パターンを崩していながら精緻な美しさを見せるその紋様は、「乱れ紗綾形」とでも呼ぶべきもので、氏の小説にも繋がるものと言える。
 家紋の本と言えば、出版されたばかりの『家紋を探る - 遊び心と和のデザイン』(森本景一著)はとてもよい本だったが、泡坂さんの『家紋の話』は、マイベスト家紋本である。
 折紙者としては、亜愛一郎シリーズの折鶴が出てくるエピソードや、題名だけだが、ずばり『折鶴』という小説なども忘れ難い。
 折鶴と言えば、『大江戸奇術考』に、紙を燃やしてその中から折鶴を出現させる術のことが書いてあり、タネが科学実験的なものなので、いつか試してみたいと思いながら、そのままになっている。
 じっさい、たいへんな才能のひとを喪ったわけである。ご冥福をお祈りします。

コメント

_ Joker ― 2009/02/07 20:34

泡坂妻夫さん。筆名がご本名のアナグラムだというのは存じ上げていたのですが、残念ながらこれまで一冊も読んだことがありません。
「乱れ紗綾形」感動しました。『家紋の話』いずれ読みたいと思います。

_ maekawa ― 2009/02/11 17:17

「乱れ紗綾形」は、泡坂さん自身が「卍鱗巴」と名付けていました。(『家紋の話』)

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