ヤマカマス2009/01/22 22:08

ヤマカマス
 昨年の暮れ、ウスタビガの繭がたくさんついている木を見た。ミミズクのようなかたちをしたこの繭は、山里で見つける「宝石」のひとつである。何年も前に拾ったものが手元にあるのだが、色はまったくあせていない(写真右)。
 さて、問題。この繭のかたちを、幾何学的な言葉で表すとどうなるか? 天蚕(ヤママユガ)の繭は回転楕円体、さらに細かく言えば、回転軸のほうが長い回転楕円体と言える。長球ともいう。ラグビーボールである。ではウスタビガは?
「長球の長軸の一端が錐状面となった立体」だろう。
 錐状面(すいじょうめん)というのは、英語ではconoid、つまり、cone=錐(すい)の「もどき」である。

 この繭は、ツリカマス、ヤマカマスなどとも呼ばれる。カマスというのは、
かます(叺) 1. わらむしろを二つ折りにし、ふちを縫い閉じた袋。穀類・塩・石炭・肥料などの貯蔵・運搬に用いる。かまけ。2. 刻みタバコなどを入れる1のかたちの袋。「叺」は国字。
(『大辞泉』)
のことである。それはつまり、「円柱の両端を直線でつぶして閉じたかたち」である。素材の伸縮がなければ、そこに現れるのは錐面であるが、特異点が対になって現れるこの曲面は、「稲荷寿司曲面」とでも言ったほうがぴったりくる。ウスタビガの繭の上部は、長球や切り取った長球ではなく、円柱をつぶしたかたちで近似してもそう無理はない。この繭は、両端がこの曲面ではないが、ヤマカマスというのはぴったりの名前なのだ。