ホシボックリ・カフェ2007/12/10 12:35

 土曜の夜、千葉県一宮町に、友人の造形作家・日詰明男さんの家を訪ね、仮設展示中の「ホシボックリ・カフェ」の中で、鍋をごちそうになった。
 ホシボックリ・カフェというのは、黄金比の原理で螺旋状に組み上げられた竹の構造体を基本にした茶室である。どこまで行っても上の部材がそれまでの部材と平行にならない二重螺旋になっている。中から見上げたかたちは、ヒマワリの種のようにもマツボックリのようにも見え、じっさい、同種の原理に拠っている。翌日、上に登ってもみたが、きわめて頑丈で、かつ、下部の壁自体をスピーカーとした(合わせて竹も振動する)音響機器でもある。
 訪問のさい「なにか気に入った音源あれば持ってきて」ということだったので、「らしいやつ」ということで、Glenn Gouldの『J.S. Bach 平均律クラヴィーア曲集1』を持っていったら、日詰さんもそれをかけていた(しばらく聴いていなかったし、それそのものかは確認し忘れたけれど、Gouldさんの演奏)。ちょうど伊坂幸太郎さんの小説『ゴールデンスランバー』を読み終わったところなので、作中にでてくるThe Beatlesの『Abbey Road』も持っていったけれど、こちらはかけなかった。テンポのゆるいクラシック(サティとか)やニューエイジ風(イーノとか)などの、ヴォーカルのない曲がぴったりだと思ったのだが、あとで、John Lennonの命日だったことに気づいて、かければよかったと、ちょっと後悔した。とくにGolden Slumbersからのメドレーは、たしか武満徹さんが編曲したものもあるぐらいで、ニューエイジの元祖みたいな気もする。
 ちなみに、ニューエイジ風が似合うからと言って、雑駁な議論で「宇宙は螺旋だ!」なんて託宣してしまう神秘主義みたいなものとは違うので、誤解なきよう。もっとも、日詰さんが「怪しげに思われているんだよなあ」と述懐すると、「じゅうぶん怪しいです」と言いたくなるけれど。
 最初に書いたように、中央から下げられた自在鉤−これは構造体の一部でもある−で鍋も楽しめる。コーヒーも何度も淹れてもらったが、燃料はマツボックリだった。中で鍋がつつけ、コーヒーが喫めるアート作品というのは、めったにない。日詰さんの同居人・二宮知子さん(漫画家さんとは別人)もまじえて、深夜まで話し込んだが(話題は、ホッキョクグマが狩りのときに黒い鼻を隠す話など、ってなんじゃそれ)、円形のにじり口を閉じていれば、まったく寒くはなかった。
 建てたいひとがいれば、相談にのりますとのこと。タワーだけでも、クリスマスツリーにぴったりだ。