イヌクシュク2007/11/10 23:40

 カナダ・バンクーバー市・イングリッシュベイビーチにあるイヌクシュクである。もともとここにあったものではなく、そもそもが1986年の万博用に造られたもののようだが、海に向かって建つそれは、じつにそれらしい雰囲気を出している。写真右は、バンクーバー市街にあるオリンピックのカウントダウンモニュメントで、イヌクシュクのマークが見える。

 わたしは、長時間飛行機や列車に乗るさいの読書というのをひじょうに楽しみにして、どの本を持っていくか悩むのもまた楽しみにする質だが、今回の往路は『柳田國男全集15』(文庫版)にした。『石神問答』が載っている巻で、内容は漏れ読んで、ここのところのわたしの関心を思えば必読書なのだが、読みたいのを2週間ほどおあずけにしていたのである。柳田翁(当時は翁という歳じゃないけれど)や山中翁らによる、シャグジという音を持つ路傍の神に関する書簡集で、これがじつに面白い。すべて候文なのだが、それもまた味がある。一番最後の柳田翁から弟宛の書簡にあった、塞の神(道祖神)信仰が国防に通じるみたいな時局(日清日露戦争の時代)への配慮を思わせる内容(と読めた)を除けば、逸脱をしない謙虚な学問的態度で、しかし隠れた熱気は強く、新しいアイデア、というよりも、民俗学という学問そのものが萌芽する記録のようなエキサイティングな内容である。
 なお、わたしの今の関心としては、「現代アイヌ語にてもサクは隔絶の義之れ有るかと存じ候」というのが一番驚いた。たしかめないといけないが、イヌク(ひと)≒アイヌというのはともかく、スクとサクも、冗談じゃなく対応しているのだろうか。ほんとうだとすれば、駄洒落と偶然の一致の域をでないだろうと思っていたイヌクシュク=人型の道祖神という解釈がど真ん中になる。これ、自分の発見のように思っていたけれど、わたしが知らないだけで、よく知られた話なのか。