広島の千羽鶴2007/08/06 23:59

 5年前、8月6日に訪れた広島で撮った写真から、広島県産業奨励館の残骸(原爆ドーム)と、被爆10年後に千羽鶴を折りながら12才で亡くなった佐々木禎子さんをモデルにした「原爆の子の像」。菊池一雄氏によるこの像は、純粋に彫刻として見ても、最も美しい「折り紙彫刻」のひとつである。ワイヤーフレームの折鶴という表現手法が秀逸で、飛翔感を生み出している。
 冷徹に考えれば、小さな紙を折り畳んで鳥の形をつくることだけで、白血病を治すことなどできない。争いのない世界を実現することもできない。しかし、そこに込められた祈りを軽んじるのは愚かなことである。絶望的な状況の中で希望を持つことは、そのこと自体、ある種の勝利なのである。
 広島市の中心街は紙屋町という。爆心地の旧市街名は細工町という。街はまさに紙細工のように燃え盡きた。だが、ひとりの少女の無垢なる思いと、その死を悼む者たちの祈りによって、焦土から生まれ変わった「平和」の二字を冠する緑豊かな公園に、一羽の折鶴が翼を広げた。その折鶴は、鎮魂のモニュメントであるとともに、未来への道標でもある。
 自分の文章、しかも、えらく美文調だけれど、『まだまだ折紙散歩』−いつも見ていたヒロシマ−(『折紙探偵団』75号) から引用。
 とくにこの日に合わせたわけではないのだが、今夕、『夕凪の街 桜の国』(こうの史代原作、佐々部清監督)を観てきた。わたしも背筋を伸ばそう」という思いを呼び起こされた。
 映画の中身からすると、そこに注目するのはどうかとも思うが、お盆を前に紙細工で飾り付けられた墓地のシーンを見て、そうそう、これは「紙民俗研究家」として調べたいと思っていたテーマなんだという思いも呼び起こされた。この習慣は各地に見られるが、瀬戸内と東北に顕著なような気がしている。